コロナ禍に襲われるだいぶ前の話だが、電車でこんな光景に出くわした。座席はほとんど乗客で埋まっていて、通路にはほとんど人が立っていない。こちら側の座席とあちら側の座席に座っている人どうしが5メートルほど離れて手話で会話していた。にこにこしていたので楽しい内容だったのだろう。車内は電車の走行音が聞こえるだけの静けさ。こんな状況でコミュニケーションが成立していることに驚きを覚えた▼ただ、車内が混雑していて相手が見えなかったり、手がふさがっていては会話は成り立たない。いろいろと制限はある。有声にしろ無声にしろ、使われる「言語」が万能だということはない。補い合うハイブリッド系で不便を解消できればいい▼ウェブ会議で、音声が乱れて映像しかわからない時があるが、そんな時も手話の簡単な言葉を理解し合っていれば切り抜けられる。話し手の話が早すぎて聞こえない時に「ゆっくり!」、同意したい時に「ですよね」、会議が終わった時に「お疲れ様」等々。ウェブでなくても、ソーシャルディスタンスをとって、簡単な合図は手話でということもできるだろう▼飲食の場面でも「何を飲む? 食べる?」「おいしいね」「お勘定を」「割り勘で」などは覚えておくとよいかもしれない。マスクを付け外す回数が少しは減るだろう。 (20・12・2)

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