品川~名古屋を最速40分で結ぶことを目指すJR東海の中央新幹線計画。静岡地区の着工を巡って揉めているようだが、超電導リニアモーターカーは着実に進化している。営業線仕様の第1世代「L0系」の改良型試験車にワイヤレス(無線)給電方式が全面導入された▼軌道から浮上して時速500キロの高速で走るリニアにはパンタグラフから電力を得る手法は適さない。これまでは先頭車両にガスタービン発電装置を搭載していたが、トンネルが多いだけに排気ガスなどの課題が残っていた▼採用されたのは誘電集電方式で、スマートフォンの充電にも用いられている。地上のループ(コイル)と車両の集電コイルとの間の電磁誘導作用を利用し非接触で電力を供給する。発電装置がなくなったことで先頭形状が改良され、空気抵抗も下がった▼無線給電技術はIoT時代を迎えて重要性が高まっている。工場などで取りつける大量のセンサーに電池を組み込まなくてすむためだ。日本では10メートル程度の距離で電力が送れる空間伝送型が実用化されようとしている▼路面から電気自動車(EV)への無線給電を目指す構想もある。これが実現すれば搭載する電池が少なくなり車体の軽量化につながる。電源という制約から解放されることによって、さまざまな可能性が開けてくるだろう。(20・6・19)

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