【デリー、シンガポール=中村幸岳】インド政府が今月4日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3日以前に日本人に発給したビザの取り消しと4日以降の発給一時停止を決めたことで、現地日系化学企業にも影響が広がりつつある。工事関係者の不在で新規導入した生産設備の立ち上げがずれ込んだり、人事異動の時期とあって後任の着任が遅れるなどのケースが生じている。
 ある化学メーカーは、現地工場で導入した製造装置の稼働開始が後ずれする見通し。装置メーカー担当者がインドに入れず、商業運転開始に必要な稼働試験や認証業務を行えないという。
 また別の企業によると、今月末に開始を予定していた事業の責任者が国外出張で出国したままインドに戻れないため、新事業立ち上げを当面見送らざるを得なくなっている。
 現地では人事異動に支障が生じているうえ、駐在員も出張などでインド国外に出ている場合は、就労ビザを取得し直さなければならないという。
 インドでは今年5月末、デリーでアジア石油化学工業会議(APIC)が開催される予定だったが、これも延期された。商社担当者は軒並み、APICに来場予定だった顧客などに代わって行った宿泊予約をキャンセルするなど対応に追われた。「9月開催が模索されているようだが、欧州石化会議(10月初頭)と近いため中止になるのではないか」(主催者に近い駐在員)との見方もある。
 近く予定していたインドでの拠点開設イベントを延期した化学企業もある。
 インド政府は当初、緊急の要件がある場合は例外的なビザ発給を認めるとしていたが、商社筋によると、少なくとも3月中は例外を認めないこととなった。3月第1週時点で、東南アジアでは在シンガポールのインド高等弁務官事務所と在タイのインド大使館は日本人の発給申請を受け付けておらず、申請や相談は在日本大使館に限られるもよう。
 なおインド入管当局は11日夜、すでに入国した場合や外交官や国連機関職員などの例外を除き、国を問わず発給済みビザを無効とし、13日から4月15日までの発給も停止すると発表した。同国の新型コロナウイルス感染者は12日朝時点で62人(外国人含む)。

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