新型コロナウイルスの影響が電子デバイスや製造装置業界にもじわじわと及んできた。「まだ目立った影響は出ていない」ところが多く、半導体製造装置・部材の業界団体であるSEMIも楽観的にみている。しかしジャパンディスプレイ(JDI)は先行きを憂慮し急きょ、運転資金の調達額を増やした。またニコンは半導体露光機の納期遅延を見込むなど、様相が変わってきている。
 スマートフォン用のCMOSイメージセンサー最大手のソニーは主力の熊本工場がフル稼働を続けている。旺盛な需要に「事業拡大に必要な戦略在庫の積み増しが思うようにできない」ほどだ。
 多層セラミックコンデンサートップの村田製作所もスマホ向け事業の比率が高いが「足元で大きな影響はみられない」。国内生産比率が70%と高く、原料から一貫生産のためサプライチェーン分断の影響も小さい。中国の4工場も「フルではないが稼働中」という。
 樹脂多層基板の「メトロサーク」も5G(第5世代通信)スマホ向けが好調で、中期経営計画で掲げる2021年度に売上高2兆円の目標も変えないとしている。
 製造装置業界でも「在庫はあるし、足元、影響は出ていない。長期的に影響が及ぶことも考え、代替部材の調達先も調べている」(東京エレクトロン)、「事業継続計画に基づき代替オプションを実行している」(ラムリサーチ)と、大きな影響はみられない。
 SEMIもサムスンやSKハイニックス、中心国際集成電路製造、長江存儲科技(YMTC)の投資拡大を背景に、新型コロナが発生した中国でさえ半導体前工程向け投資額が20年は前年比5%増の120億ドル、21年も同22%増と右肩上がりを予測する。
 ところが一部では深刻な影響が表れている。JDIは13日、資本提携先のいちごトラストから100億円を追加調達すると発表した。中国で後工程を手がける工場の稼働率低下やユーザーであるスマホ大手の生産計画遅延など、新型コロナの影響により7月以降の運転資金が不十分と判断したためだ。
 製造装置でも、世界で唯一の第10・5世代基板対応液晶パネル露光機を手がけるニコンは中国のディスプレイ大手の投資抑制で「数台の出荷がずれ込みそうだ」と話している。
 なおキヤノンは中国からのパーツ供給が滞っていることから、13日まで大分、長崎、宮崎のカメラ工場を休止していたが、16日から再開した。この間の生産不足分は4月以降年内いっぱいかけて土日祝日も操業し遅れを取り戻す。

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