中国・武漢で発生した新型コロナウイルスは、世界のエレクトロニクス産業に影響を及ぼしている。韓国ではサムスン電子の従業員で感染者が発生、ハイエンドスマートフォンを生産する亀尾市の工場を操業停止にしている。亀尾にはLG電子やLGディスプレイ、東レなども工場を構えるため、影響が懸念される。このほか、2月末にスペイン・バルセロナで開催予定だったモバイル見本市「MWC」が中止に追い込まれるなど影響は全世界に及んでいる。サプライチェーンの混乱も相まって新製品の販売計画や材料供給に大きく影響しそうだ。
 中国以外で最も深刻な状況に陥っているのは韓国だ。28日には感染者数が2000人を上回り、拡大に歯止めがかからない状況にある。韓国企業は拡大阻止のための取り組みを行っているが22日、サムスンの亀尾工場の従業員が新型コロナウイルスに感染していることが分かった。
 サムスンはスマホ製造の半分以上をベトナムに移しているが、一部のプレミアムモデルを亀尾で生産している。サムスンは新型の折りたたみスマホの発売を計画しているが、亀尾工場の稼働停止による影響が懸念されている。主要部材を供給している日系化学メーカーにも影響が及ぶとみられる。
 亀尾にはLG電子やLGディスプレイも拠点を構えている。約40キロメートル南東の通勤圏内に、感染者数が急増している大邱市がある。LGでは大邱からの通勤者に対し自宅待機およびテレワークを行わせている。また、大邱を訪れた従業員に対し、14日間オフィスに入ってはならないとの指示を出している。
 サムスンやLGは中国にも製造拠点およびオフィスを構えている。中国の一部の都市では新型コロナウイルスの逆流入を回避するため、韓国からの入国者を14日間隔離する措置をとっている。中国拠点の操業にも、今後影響が及ぶとみられる。
 一方、2月は中国系を中心にスマホの新製品発表会が多く計画されていたものの、インターネットを活用したオンラインでの発表会に切り替えられた。小米科技(シャオミ)はフラッグシップモデル「M10」の発表会を北京で行う予定だった。3000人規模のイベントを計画していたが、感染拡大を回避するためオンラインでのイベントに切り替えた。華為技術(ファーウェイ)も2月にオンラインでのイベントを開催した。
 OPPOはバルセロナで開催予定だったモバイル見本市のMWCでフラッグシップモデルのスマホやスマートウオッチを発表予定だったものの、新型コロナウイルスにより同展が中止に追い込まれたため、オンラインでの発表会に切り替えた。同展には、ソニーをはじめとする日系大手電機メーカーやガラス大手の米コーニングも出展する予定だったが、発表の機会を逃すにいたった。
 日本でもスマホをはじめとする電子製品の新製品発表会や展示会の中止が相次いでいる。大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗員・乗客を含めると感染者数が世界3位のため、日本人の入国を拒否する国や14日間の隔離措置を検討する国が増えている。中国の一部のオフィスや住宅では日本や韓国からの入国者を14日間隔離する措置がとられている。日本のエレクトロニクス産業も韓国同様に厳しい状況に陥る可能性が高い。(中尾祐輔)

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