中国の国家統計局が16日に発表した1~2月の主要経済統計は、新型コロナウイルスが中国経済に想定を上回るダメージを与えていたことを示すものとなった。化学関連でも、春節(旧正月)期間中も稼働させていたエチレンこそ前年を上回ったが、化学原料および化学品製造業の付加価値額は前年同期比マイナス12・3%となるなど大幅な落ち込みとなった。中小や民営企業の工場の設備稼働率がなかなか上がらず、第2四半期(4~6月)の回復に黄色信号が灯る。
 生産の動向を示す工業生産高は前年同期比13・5%減と、昨年12月(6・9%増)から急落し、記録が確認できる1998年以降初めてのマイナスを記録した。多くの企業が春節休暇後も操業を停止し、再開後も人手不足や物流の混乱で稼働率が低迷したことが響いた。企業の設備投資などの固定資産投資も24・5%減と過去最低水準。道路や鉄道などのインフラ投資は30・3%減に急落した。
 1~2月のエチレン生産については春節期間中も中国石油(SINOPEC)など国有企業がナフサクラッカーの稼働を続けたため5・6%増の352万トンを確保した。
 他方、ガソリン需要の大幅減もあり、原油処理量は3・8%減。主な製品の生産量をみても、化学繊維(13・6%減)、カ性ソーダ(13・6%減)などが軒並み振るわなかった。業種別の付加価値額ではゴム・プラスチック製品が25・2%減と大幅減。医薬製造業は12・3%減だった。
 「想定以上の落ち込みに驚いている」。日本総研の関辰一主任研究員は統計発表を受け、1~3月期の中国の経済成長率予想をマイナス1%からマイナス10%へと再び下方修正した。とくに「民間や中小企業を中心に工場の設備稼働率が予想以上に低かった」。
 中央政府は国有企業を中心に生産再開を急がせ、マスクや消毒液などの防疫品も充実させてきたが、外資や民営企業の回復は鈍い。生産高でみると、国有企業の落ち込みがマイナス7・9%にとどまったのに対し、外資はマイナス21・4%、民間企業もマイナス20・2%と2割減を余儀なくされた。北京市が16日、国外からの入境者に対して原則、政府が用意した施設で14日間隔離する方針を打ち出すなど「目まぐるしく変わる渡航者対策が生産回復の足かせになっている」(総合商社幹部)。
 大和総研は1~3月の成長率を3・8%程度としていたが「状況の厳しさを見誤っていた」(齋藤尚登主席研究員)としてマイナス7%に下方修正。4~6月についても感染拡大にともなう世界需要の減退や雇用悪化による消費の鈍さからマイナス成長になるとみる。
 11日に武漢市で操業を再開したホンダ系の樹脂部品メーカーの総経理は、労働力や需要不足がいぜん深刻で「本格稼働は5月以降にずれ込みそうだ」と明かす。在中日系大手化学企業の総代表は「中国が立ち上がっても世界経済の減速で樹脂製品などの輸出の停滞を予想している。上期のV字回復シナリオには懐疑的だ」とこぼす。(但田洋平)

都市部の経済活動は正常化しつつあるが(上海市)

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