新型コロナウイルス感染症の治療支援に向けて、国内外の製薬企業や規制当局が医薬品の安定供給に向けた取り組みを一段と強化している。先ごろ新型コロナに対する効果が報告された帝人ファーマのぜんそく治療薬は、臨床研究などの需要に向けて同社が約2万本分を確保する。すでに各国で臨床試験などが行われている米アッヴィのヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症治療薬も供給体制を強化し、各国の臨床研究などを支援していく。
 帝人ファーマは、国内販売している気管支ぜんそくの治療薬「オルベスコ」(一般名・シクレソニド)について、新型コロナ感染症に対する臨床研究などにも供給することを10日表明。厚生労働省からの協力要請を受けたもので、最も用量が多い製剤(200マイクログラム)を2万本確保する。同社によると、現時点で増産の予定はない。ぜんそく治療向けの供給分を確保したうえで、追加的に2万本準備する。
 同剤は海外からの導入品で、日本向けの製剤がどこで製造されているかは非開示。もともと武田薬品工業が買収したスイスのナイコメッドが開発した医薬品で、帝人ファーマが日本での権利を獲得し、2007年に国内発売した。海外での権利は、米サノビオン・ファーマシューティカルズ(大日本住友製薬の子会社)、英アストラゼネカを経て、オランダのファンド系医薬品企業が保有している。
 アッヴィの抗HIV薬「カレトラ」も、新型コロナ感染の需要増に応える。アッヴィは9日、世界各国で行われている同剤を用いた臨床試験などを支援していく方針を表明。欧米の規制当局などと協議しながら同剤の新型コロナに対する有効性、安全性を確認する。各国の試験実施に支障が出ないよう治験薬を供給するとともに、HIV治療向けにも十分な供給を続けることを約束した。
 カレトラを用いた新型コロナ治療の臨床研究は日本でも始まっており、日本感染症学会も同剤を適応外使用する場合の暫定指針を出している。同社日本法人によると、日本政府から治験薬提供などの協力要請などがあったかは非開示だが、「HIV治療向けの供給は問題ない」としている。
 欧州では、規制当局が医薬品の安定供給に向けて連携を強化。欧州医薬品審査庁(EMA)を中心に各国当局の担当者らによる運営グループを立ち上げ、このほど初会合を開いた。感染拡大による工場の一時封鎖や物流・移動の制限などにより供給リスクが高まった場合の対応策を検討する。当局は製薬企業に対しても、在庫の積み増しや調達の複数ソース化などに取り組むことを求めている。

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