新型コロナウイルスの震源地とされ、中国で唯一、企業や工場の操業停止が続いてきた湖北省で経済活動の再開に向けた動きが緒に就いた。省内の移動制限が一部解除され、ホンダや関連部品メーカーなどが11日、工場の操業を再開している。ただ、いぜん制約も多く、本格稼働を取り戻すのは4月以降との現地の声も聞かれる。
 湖北省政府は10日、感染リスクが低い地域の健康な人を対象に移動制限を解除した。一部地域の操業再開許可も出し始め、ホンダや関連部品業者は9日付で武漢市内の工場を動かす許可を得た。1月24日に始まった春節(旧正月)休暇を含めると実に1カ月半以上企業活動を停止していたことになる。
 もっとも、11日現在も市内の移動制限は続き、ホンダ系の自動車部品メーカーの関係者は「車での通勤が認められず、一部の従業員が徒歩や二輪での出勤を強いられた」とこぼす。この会社で出勤できたのは全従業員の2割にとどまり、再開初日は掃除や機械の点検・消毒作業しかできなかったという。「地区ごとの自主的な封鎖もまだ続き、現地では混乱が続いている」(現地の日系商社)。
 武漢市における感染者の拡大には歯止めがかかってきたが、それでも新たな発症者を出し続けている。市場では再稼働時期の延期を予想する向きが多く、このタイミングでのホンダの工場再開許可に驚きの声もあった。ホンダに樹脂部品を納める日系企業の総経理は「東風グループの新車販売が低迷するなか、東風本田のみが一人気を吐き、収益を下支えしてきた。グループ全体で、何が何でも武漢を動かすとの意思を感じた」と話す。
 一部の移動制限は解除されたものの、武漢市では高速鉄道や空港の封鎖が続き、物流や原材料調達でもまだまだ制約が残る。現地部品メーカーの代表は「ホンダの稼働回復次第だが、自社の稼働が春節前の水準に戻るのは早くても4月以降ではないか」とみている。(但田洋平)

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

新型コロナウイルスの最新記事もっと見る