新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、化学企業の決算日程や会見方法の変更が相次いでいる。4日に緊急事態宣言が延長されたが、それ以前に変更を決めた企業が多いものの、延長決定を受け変更を決めた企業もある。会計担当者が在宅勤務となっていたり、「3密」を避けるため監査法人による監査がテレビ会議となるなど国内の集計作業の遅れに加え、厳しい外出制限で休業を余儀なくされた海外子会社の集計作業が遅れるなど背景はさまざま。8日時点で決算日程が未定の企業も散見され、異例の事態となっている。

 ダイセルは8日、未定としていた2020年3月期決算発表を5月27日に決めたと発表した。当初は5月12日を予定していたが、コロナの影響で延期するとしていた。生産は、国内は通常通り稼働しているが、海外では中国が2月に数日から2週間程度の停止(現在は再開)、米国が3月下旬~4月下旬の約1カ月停止(同)、その他の国は一部で時間短縮や停止期間を設けるなどして稼働している状況。業績への影響は第4四半期(1~3月)に中国の需要減速で主に合成樹脂事業、火工品事業の販売が減少しており、現在精査中としている。

 東レは当初、5月13日に3月期決算発表を予定していたが、コロナ感染の世界的な広がりにより監査法人による国内外関係会社の監査手続きなど決算業務に遅れが生じることが見込まれるとして、5月28日に延期を予定。会見も電話会議を予定している。

 そのほか、トクヤマが5月15日、日本化薬および日本曹達が5月19日、セーレンが5月21日、日本板硝子および共同印刷が5月22日、サカタインクスが5月26日、保土谷化学工業が5月28日、大日精化工業が5月29日にそれぞれ延期を予定している。原油価格の急落など外部環境が大きく変化している石油精製各社も延期しており、JXTGホールディングスが5月20日、コスモエネルギーホールディングスが5月21日、出光興産が5月26日にそれぞれ変更した。

 決算日程は変更しないものの、対面会見を予定していたほとんどの化学企業がテレビ会議や電話会議に変更したり、変更を検討中だ。きょう11日は東洋紡が電話会議に、5月12日は旭化成がウェブ方式に、5月13日は宇部興産が電話会議に、5月14日は三菱ガス化学が電話会議に、5月15日は住友化学および昭和電工がそれぞれウェブ方式に変更。5月14日に予定する三井化学もウェブ方式への変更を検討中だ。また、5月12日に決算発表を予定する東ソーや、5月13日に予定するデンカは会見を取り止めた。

 決算発表では、各社が今期の業績予想にコロナの影響をどれほど織り込むのか、いつ正常回復を見込むのかなど注目される。すでに20年3月期決算を発表した化学企業ではJSRが500億円減収、積水化学工業は280億円減益(営業利益)をそれぞれコロナの影響として織り込んだ。もともと通期決算時点で今期業績予想を公表していない信越化学工業は引き続き非公表としたほか、日本ゼオンは合理的な予想が困難として差し控えている。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

新型コロナウイルスの最新記事もっと見る