東京都やその隣接県が週末の外出自粛要請を出すなど、影響が拡大する新型コロナウイルス。感染対策として家庭や職場、公共施設などあらゆるところでこまめな消毒が習慣になりつつある。これにともない需要が急増しているのが消毒作業や除菌に使われる薬剤・製品だ。現状では原料は確保されておりメーカーはフル稼働だが、需要増に容器不足が相まって一部の製品は品薄状態。各社急ピッチで対応策に乗り出している。

病院など優先を

 ビルや店舗などの玄関に設置され、手指の消毒用に一般消費者にもなじみ深いアルコール消毒液。主原料にはサトウキビなどから得られる植物由来の発酵アルコールが使われる。グループ会社で発酵アルコールの製造を手がける日本アルコール販売では、手指用アルコール消毒液メーカーからの受注が増加。顧客によっては3月の受注量が前年同月の2倍に達したところもあるという。
 ブラジルから原料の粗留アルコールを輸入しており、3月には追加分となる1万4000キロリットルの粗留アルコールを現地で確保。サトウキビ収穫の端境期に当たるため、少ない現地在庫をかき集めた格好だ。
 これに日本国内のタンクなどにストックしている原料と製品の在庫を合わせると「今の消費ペースであれば8月末ごろまでは供給できる」と同社の雨貝二郎会長兼社長は話す。物流子会社では運送用のローリーも追加で手当てしており、24時間体制で生産する顧客にも対応する。
 自社グループで手がける医薬部外品のアルコール消毒液の生産能力も増やす。子会社の信和アルコール産業で既存の新神戸事業所(兵庫県)に加え、船橋事業所(千葉県)に設備を導入し月産200トン供給可能とする。同社では受注量が通常より3割程度増加しており、幼稚園や介護施設、医療機関向けなどを中心に4月から供給を開始する。
 こうした手だてを打つ一方で、雨貝会長兼社長はユーザーに対し「今使っているものがなくなる直前まで購入を控えてほしい。病院や介護施設などへ優先的に供給できるようにしないと」と警鐘を鳴らす。

ポンプ部品不足

 市場がタイムリーな供給を求めるなか、アルコール消毒液増産のネックとなっているのがプラスチック製容器だ。とくにワンプッシュで手元に噴霧できるポンプ部分が不足している。医療機関向けなどに医薬品や化学品の容器を供給している東洋硝器(大阪府枚方市)では、ポンプ部分を製造委託している中国浙江省の工場から1月後半の旧正月以降止まっていた製品供給が3月中旬に再開。江口博一代表取締役は「4月から入荷ペースは上がってくる」と話す。
 製薬企業など消毒液メーカーからの注文の増加に対し、同社では容器本体を製造しポンプと組み立てる本社事業所(同府高槻市)と関東工場(茨城県下妻市)を24時間体制で動かし、需要に対応している。
 容器を輸入しているある商社では中国品の不足に対し、ポンプ部分に必要な部品の一部をメキシコから輸入し、国産部品と合わせて組み立てて対応する。それでも足元で受注した分の納入は6月後半になるという。ポンプ部分はチューブやストロー状の部品など「国産の一部のパーツがタイトになってきている」と担当者は危惧する。ポンプや部品のメーカーにとっては過去のインフルエンザ流行時に容器不足になった際、追加で輸入したパーツが届いた矢先に流行が収束した苦い経験があり、在庫の積み上げに慎重な側面もある。

詰め替え可能に

 厚生労働省の増産要請に各社が応え、経済産業省によるとアルコール消毒液の国内生産は2月から増加している。3月は前年同月に比べ2倍程度に達する見込みだ。今後は既存メーカーの増産のほか国から設備増設の補助金を受けた4社が順次加わり、4月も生産量が増えることが予想される。
 厚労省は2月末に消毒用エタノールの詰め替えにゴーサインを出した。これまで医薬部外品では認められていなかった詰め替えボトルの生産も事実上可能となっている。

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