新型コロナウイルスの感染流行を受けて米国食品医薬品局(FDA)は、製薬業界などに対し臨床試験の実施体制を見直すことを求めている。被験者や治験関係者が医療機関を訪問するのが困難になってきており、被験者らの安全を最優先したプロトコルで試験が継続されるようにする。18日付で試験実施に関するガイダンスを発出し、電話やインターネットなどによる「バーチャル治験」の活用などを提案している。
 FDAは、新型コロナの流行で検疫や渡航制限が厳しくなり、治験実施施設の閉鎖やサプライチェーンの混乱なども生じる可能性があると指摘。治験実施施設などで感染者が出た場合のリスクも踏まえると、従来の計画通りに治験を行うのが困難になると判断。製薬企業などの治験実施者や実施機関に対し、治験プロトコルを見直し、被験者や医療関係者の安全を確保できる内容に修正することを求める。
 18日付で発表したガイダンスによると、GCP適合性の保持を求めつつ、新型コロナ対策のために「やむを得ない逸脱」が生じたとしても、要因などが記録に残されていれば容認する方針だ。変更内容について治験審査委員会(IRB)の承認やIND(治験届)の修正申請を待たずに即時適用することも認める。新型コロナ検査が行われても、治験内容に影響がなければ当局への報告は必要ないとしている。
 ガイダンスでは被験者や医療従事者らの安全を確保できる体制を確認するとともに、デジタルツールなどを用いた手段に切り替えることなども推奨。対面ではなく電話によるインタビューやリモート・モニタリング、被験者自身による治験薬の投与などを提案している。
 新型コロナの影響で臨床試験を見合わせる企業はすでに出始めている。ベンチャー企業の米プロベンション・バイオは16日、被験者や医療関係者、社員らの安全を十分に確保できないとして、欧米で行っていた糖尿病治療薬の第3相臨床試験を一時停止。米イベリク・バイオと米アデックス・セラピューティクスも18日、承認申請前のピボタル試験を延期することをそれぞれ発表した。

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