【シンガポール支局】米エクソンモービルは現地時間7日、2020年の設備投資(CAPEX)を30%、事業経費(OPEX)を15%それぞれ削減すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため世界各国で都市封鎖が実施され、原油や石油製品、化学品の基礎需要が減少しているのが理由。投資圧縮は、米国での油田開発計画の見直しなどが柱になる。一方、シンガポールでは予定通り製油所の高度化投資を進めている。
 エクソンモービルは当初、20年の設備投資に330億ドル(約3兆6000億円)を充てる計画だったが、これを230億ドルに減額する。各種製品の市況が下落しているため、事業費削減も決めた。市場の状況次第ではさらなる投資・経費削減も検討する一方、需要減が同社の現在および長期的な生産体制にどの程度の影響を及ぼすのかを分析する。
 ただ同社のダレン・ウッズ会長兼CEOは、「われわれの事業計画の根拠となっている、長期における基礎的条件に変わりはない」としている。
 投資額の削減幅が大きい案件は、米テキサス州とニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地での大規模油田開発。計画そのものの縮小はせず、需要回復を待って開発ペースを上げる。南米ギアナ沖での油田開発は、着手済みの第2鉱区で生産を予定通り22年に始めるが、未着工の第3鉱区での生産開始は1年程度遅れる見通し。
 アフリカ・モザンビークでの液化天然ガス(LNG)開発は年内の投資決定を予定していたが、これも延期する。
 新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みについては、除菌剤に使うイソプロピルアルコールやマスク素材ポリプロピレンの安定供給に万全を期す一方、再利用可能なマスクを増産する方針。
 一方、シンガポールでは製油所の高度化投資を本格化させている。本島ジュロン地区の製油所で、「グループ2」と呼ばれる鉱油系潤滑油ベースオイル(基油)を増産する計画。完成は23年の予定で、増産幅は日量2万バーレル(年産約100万トン)。
 重質留分や燃料油を付加価値の高い潤滑油基油に転換することで、製油所の競争力を高める。グループ2は自動車エンジン用の潤滑油などに使われ、グループ1基油に比べ硫黄分が低く、低温条件下での機能性が高い。
 今回の投資に当たっては、排ガスを回収・圧縮してフレアを減らす技術や、排熱を回収して蒸気生成に利用する省エネ・環境技術を実用化する。またエクソンはシンガポール政府と、二酸化炭素(CO2)の貯留技術の実用化に向けた議論も重ねている。
 エクソンモービル以外の石油メジャーも設備投資を抑制している。新型コロナウイルスの感染拡大に加え、サウジアラビアとロシアの対立に起因する原油価格の下落などが背景にある。
 BPは2020年の設備投資額を約120億ドルになると予想するが、これは以前の見通しを約25%下回っている。新型コロナウイルスの感染地域が中国のみならず欧州や米州、中東など全世界に広がっており、各国で消費が落ち込んでいる。
 20年第1四半期は燃料、ジェット燃料、潤滑油の需要の大幅な減少の影響を受けると予想される。同社は設備投資の抑制や支出削減などで財務を強化し、新型コロナウイルスを乗り越えようとしている。
 シェルは新型コロナウイルス感染拡大による石油需要の減少、増加する供給量に、運用コストおよび設備投資の見直しで対応する。当初の250億ドルから200億ドル以下に削減する方針。また、運用コストは19年に比べ年間30億~40億ドル削減するとしている。これらの取り組みによって、税引き前ベースで80億~90億ドルのフリーキャッシュフローが実現すると予想している。

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