米イーライリリーは23日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの臨床試験を見合わせると発表した。新たな試験の立ち上げや進行中の試験の症例登録を中断する。新型コロナが各地の医療提供体制に大きな影響を及ぼしており、すべての試験を継続するのは困難と判断した。米ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)も一部の試験計画を見合わせることを決めるなど、大手製薬の臨床開発にも影響が広がっている。
 イーライリリーは、同社が新たに始める予定だったほとんどの臨床試験の開始を延期し、進行中の臨床試験も新規の症例登録や健常者の登録は見合わせる。すでに症例登録され、薬剤の投与を受けている被験者は試験の継続が可能だが、ケース・バイ・ケースで継続を判断する。同社の治験にかかわる医療機関の負担を軽減することで、医療機関が新型コロナの対応を最優先できるよう協力する。
 同社は現時点で開発が遅れる見込みになった新薬として、抗IL-23抗体「ミリキズマブ」のクローン病や潰瘍性大腸炎など消化器系疾患分野の開発を挙げているが、最近試験を開始した他の新薬開発も影響がありそうだ。
 新型コロナの影響で臨床試験を見合わせる製薬企業は増えている。先週以降、米国のベンチャー企業などが治験中断や新規試験の延期などを相次ぎ発表。BMSも20日、早くても4月13日まで新たな治験実施施設の立ち上げを見合わせ、感染流行地では健常人を含む治験も延期することを治験関係者向けに通知した。米国食品医薬品局(FDA)も18日付でガイダンスを出し、被験者の安全を確保できるよう臨床試験の実施体制を見直すことを企業などに求めている。

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