7日の緊急事態宣言を受け、産業界が対応に乗り出している。スペシャリティケミカル分野も宣言前から取り組んでいる感染防止対策をさらに強化し、対象となる7都府県を含め国内生産拠点は通常操業を続けている。製薬・医療機器業界も現時点で工場の操業停止を公表している製薬会社はなく、医薬品の安定供給を確保している。電機業界も社会インフラを担う事業を手がけていることから、感染症対策を徹底した上で生産、物流、サービスなどの業務を継続している。

スペシャリティ生産体制は維持

 対象地域の兵庫県に4工場を構えるダイセルは、非接触型の体温計による全入構者の検温実施、不要不急の面談中止などの対策を徹底した上で工場の操業を維持。本社関係などを中心に進めてきた在宅勤務について、工場でも対象者を設定し可能な範囲で在宅勤務を活用する。
 日本化薬は間接部門を8日から原則、在宅を中心とした勤務とした。国内工場はすべて操業を維持している。ADEKAは2010年に取得したBCMS(事業継続マネジメントシステム)を各工場に適用しており、これらのスキームに基づき対応する。日油は営業、研究部門を中心に進めていた在宅勤務、時差通勤、フレックスなどを徹底、一部導入していなかった部署も進展させている。対象地域では子会社も含めて生産、販売、営業活動に支障がないよう対応する。
 大阪ソーダは、対象地域の大阪本社、東京支社、研究センター(兵庫県)は一部テレワーク・在宅勤務を行っており、生産優先のため尼崎工場(兵庫県)など製造工場は通常通りに生産を継続。住友精化も現時点で、国内外の生産拠点において製品供給に支障をきたす事態は生じていない。
 インキ関連では、DICは4月1日付異動の社員を6月1日まで猶予することを新たに決めた。東洋インキSCホールディングスは、対象地域では製造部門など在宅勤務が難しい部門や業務を除き原則在宅勤務とした。サカタインクスの国内工場は通常稼働しており、原材料の供給、製品販売においてとくに問題は発生していない。
 また関西ペイントは、対象エリアの工場では安全に配慮した上で操業を継続。事業所では在宅可能な社員は在宅勤務を推奨、出社している社員も距離や勤務時間をずらすなど接触時間を減らし感染リスクを下げる。
 エア・ウォーターは緊急対策本部を立ち上げ、会長のトップメッセージを全従業員へ展開。対象エリアの工場の操業については、緊急事態宣言の期間を想定して、事業継続の観点から必要な生産拠点は稼働を行う。工場の管理スタッフは在宅勤務を行う方針。
 化学品商社では、長瀬産業が同社およびNAGASEグループ各社の事業所への出勤禁止にともなう在宅勤務を実施。グループ製造会社については、安全に配慮したうえで操業を継続する。ソーダニッカも対象地域の事務所を在宅勤務体制とし、受発注業務は電話・FAXから電子メールへ切り替える。阪和興業も対象地域は原則として在宅勤務。それ以外の国内拠点は全役職員などの75%以上を在宅勤務とする措置を継続する。

化粧品、店頭販売で影響

 一方、化粧品業界では、これまで在宅勤務などの対象に含まれることが少なかった店頭販売や生産といった活動にも影響が出始めている。7日、原則在宅勤務から出社禁止に切り替えた花王グループでは、その対象に全国約5000人の美容部員も加えるとした。当面、店頭派遣は行わない。ただSCM(工場・物流)活動の従事者は措置の対象外とする。
 資生堂も8日、7都府県で美容部員約6000人の店頭派遣を5月6日まで中止すると公表した。久喜工場(埼玉県)と大阪工場(大阪市)では生産従事者の同時出勤を減らすなどの対応を取る。生産個数の減少につながるため、優先度をつけて生産品目を判断する。コーセーは、グループ従業員の出社人数や頻度を3分の2程度に抑えるとしてきた取り組みを一層強化。狭山工場(埼玉県)は従来通り操業する。
 資生堂やコーセーで5月に予定していた新商品の発売を夏以降に延期といった動きも出ている。

製薬、安定供給に力注ぐ

 製薬・医療機器業界も対応に追われている。アステラス製薬は緊急事態宣言に該当する7都府県の事業所の社員について一部をのぞき出社を禁止にした。塩野義製薬も7都府県では社員の出社を原則禁止にし、ゴールデンウィーク明け以降も政府の指示に応じて対応期間を検討するという。
 テルモは7都府県の対象地域外に工場を構えており、「医療を止めない」(同社)ためにも社員の健康と安全を最優先に稼働を継続する。都内の本社地区では在宅勤務の割合が9割に上っていたが、緊急事態宣言にともない出社を完全登録制にしたという。オリンパスも都内の事業所を対象に5月1日まで在宅勤務の延長を決めた。
 緊急事態宣言の発令を踏まえ、医薬品卸各社も安定供給体制の構築に向けた取り組みに動く。スズケンと東邦ホールディングスは協業について言及。不測の事態に備え、共同配送や納品代行などの物流体制を検討し、有事の際の卸間連携による医薬品流通のあり方を模索していく。

電機・電子、一部臨時休業

 電機・電子業界各社は、首都圏中心に進めてきた在宅勤務を7都府県に所属する事務所に拡大している。三菱電機は26事業所、約2万人の社員を対象に原則在宅勤務とし、富士フイルムは、従業員の罹患防止と企業活動維持を両立させるため可能な業務を対象に在宅勤務を導入した。日立製作所は前倒しでリモートアクセス環境を増強ずみ。3日時点で5万人を超える社員がリモートアクセスを同時利用している。
 生産面では、三菱電機は工場の製造ラインなど在宅勤務が困難な者には感染防止対策を講じた上で出社可能とする。一方、キヤノンは、本社と川崎市内の4事業所(川崎、小杉、多摩川、矢向)を対象に7日から17日まで臨時休業することを決定した。

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