新型コロナウイルスの急速な感染拡大を受け、「緊急事態宣言」が発令された。経済への打撃が懸念されるが、産業界ではすでに在宅勤務など対策をとっており、事業継続という点で「対応が大きく変わることはない」との見方が大勢を占める。化学関連企業の生産活動についても7日時点で大きな支障はないと見る向きが多い。ただ感染の拡大によっては、今後、影響が出る可能性は否定できない。各社とも必要に応じ対策を追加していくとしており、基幹産業として生産・供給の維持に万全を期す構えだ。

◆テレワーク体制強化

 緊急事態宣言への対応として多くの企業が挙げるのが、在宅勤務を含むテレワークや時差出退勤、事業所などへの来訪制限などの徹底。「当該地域でさらにテレワーク体制を強化し本・支店機能は維持する」(信越化学工業)、「当面の間、グループ国内企業全社員を対象に出社禁止(在宅勤務)とする」(花王)など対策のレベルを引き上げるが、「基本的には現在取り組んでいる内容を継続していく。新たな指針が示されれば対応を検討する」(東レ)のが多くの企業の方針となっている。
 また、「緊急事態宣言は物流などインフラには影響を与えない前提のため、生産や供給体制に大きな変更はない」(帝人)、「緊急事態宣言で工場の操業に影響があることは現時点で想定していない」(昭和電工)と、現段階で生産活動に大きな影響は見込まれない。「重要部門を2班に分けるなど感染拡大防止対策をとっている」(ダイセル)、「継続業務および重要業務に携わるBCP要員以外は拠点への入所を禁止する」(AGC)など万全の感染対策を講じた上で操業を維持していく考えだ。
 三菱ケミカルは鶴見工場(神奈川県)、福岡事業所(福岡県)の操業を継続する。福岡は1000人規模と大きいが、多くの人員を要する設備停止作業時の感染リスクや、福岡だけで生産する品目があることなどを踏まえ継続を決めた。日本触媒も姫路製造所(兵庫県)と川崎製造所(神奈川県)の操業を継続し、対象地域に複数の工場を有する東海カーボンも「取り得る安全対策を組み込んで操業を維持する」。

◆SC分断で戦略再考

 現時点で、化学企業の国内の生産活動やサプライチェーン(SC)に大きな影響は出ていない。ただ、「多くの製品で数量が下振れ傾向にある」(ダイセル)との声も出始めており、「今後の需要状況により変化があるかもしれない」(トクヤマ)と見る企業もある。欧米をはじめ外出制限が続く海外では一部操業を休止している工場もあるが、化学関連プラントの多くは操業を維持している。ただ、「ここまでサプライチェーンが分断されると長期的に戦略を見直す必要がある」(東レ)と、各社とももう一段の対応が迫られている。

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