新型コロナウイルス感染症の回復者のほとんどが、感染から半年後も再感染を防御する「中和抗体」を保有しているとの調査結果を横浜市立大学の研究グループが2日発表した。感染時の症状が重かった人ほど中和抗体の活性が強かった。抗体検査には同大、東ソー、関東化学が共同開発した試薬を使った。持続期間の長い中和抗体を確認できたことで、同大の山中竹春教授は「ワクチン開発にも一定の期待を持てる」と説明した。

 4月の第1波の感染から約6カ月を経た回復者376人の血液を調べ、新型コロナウイルスの働きを中和する抗体の強さや、どんな抗体を保有しているかを解析した。感染時に無症状・軽症だった人の97%が中和抗体を保有し、中等症、重症だった人は100%保有していた。中和抗体は血清とコロナウイルスに特性を似せたシュードウイルスを試験管内で混ぜて解析。血清を50倍に希釈しても一定の活性を持つ状態を中和抗体を保有する基準とした。

 抗体は、スパイク(S)たんぱく質とヌクレオカプシド(N)たんぱく質のそれぞれIgGと総Igの4種類を調べた。全体の抗体保有率は97%だが、軽症者のNたんぱく質のIgG保有率は79%と抗体ごとに保有率に差があった。中和抗体の活性と最も相関するのはSたんぱく質IgGで、全体の保有率は98%だった。

 抗体検査に用いた4種類の試薬の原料は関東化学、製品化は東ソーが手がけた。東ソーの全自動化学発光酵素免疫装置を用いて測定し、感度、特異度ともに100%と、米アボットやスイス・ロシュなど海外品と同等以上の性能が示されたという。東ソーは調査で使った抗体検査薬を2日に販売開始した。

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