新型コロナウイルスの感染拡大で韓国経済が苦境に立たされている。貿易依存度の高い産業構造は世界経済の低迷の余波をもろに受ける。渡航制限をめぐって日韓対立も再燃してきた。今後の経済動向をどうみるか。韓国経済に詳しいニッセイ基礎研究所の金明中准主任研究員に聞いた。

◆…新型コロナの韓国経済への影響をどうみていますか。

 「米中摩擦や日韓における輸出規制に緩和の兆しがあり、2020年は前年を上回る2・3%程度の経済成長が期待されていた。新型コロナにより、冷や水を浴びせられた格好だ。株価は大きく下がり、ウォン売りも続いている。製造業の場合、中国からの部品が安定的に供給されず、生産計画に狂いが生じ始めた。旅行業界への被害も甚大だ。感染拡大を恐れて外食や商店街などへの外出が減り、民間消費も大きく萎縮している。とりわけ、韓国は就業者に占める自営業者の割合が25・1%と高い。飲食点など零細の自営業者の経営をもろに受けている格好だ」

◆…20年の経済成長予測は。

 「中国の1~2月の生産高は13%減少した。韓国経済は中国への依存が強く、1~3月期の成長率も同様に落ち込むだろう。4~6月期の回復を期待していたが、貿易中心型の韓国にとって足元の欧米における感染拡大、経済停滞は痛い。中小企業がこの苦境に耐えられるのはせいぜい2~3カ月。今後は倒産する企業も増えてくるだろう。通年でみれば、厳しい年になると予想せざるを得ない」

◆…中国に偏ったサプライチェーンの分散の必要性を説いています。

 「韓国は輸出が国内総生産(GDP)の7割を占め、とりわけ、中国依存度がまだ高い。19年の輸出額の25・1%、輸入額の21・3%を中国が占め、2位のアメリカ(輸出13・5%、輸入12・3%)と大きな差がある。経済規模のトップが半導体で、2位が石油化学だが、こうした産業も中国への依存度が強いのが現状だ。サプライチェーンが一国に偏りすぎると、何か問題が発生した際のリスクが大きい。今後、韓国政府はリスクを分散し、生産活動への負の影響を最小化する必要がある」

◆…文政権は東南アジア(ASEAN)諸国との関係を深める「新南方政策」を進めています。

 「日本や米国、中国との関係が冷え込むなか、6億人超の人口を抱えるASEANとの関係強化に活路を見いだそうとしてきた。新型コロナも契機とし、徐々に中国依存が縮小し、貿易に占めるベトナムやインドなどの比率が高まっていくだろう」

◆…日本政府は水際対策を強め、韓国からの入国を大幅に制限する措置を打ち出しました。韓国も対抗措置をとりました。

 「休戦状態にあった日韓対立が再点火されることになってしまった。やはり、首脳間で感情的な対立が残っているのだろう。両国ともに危機的状況にあるのだから、良いところを学び合い協力し合うべきなのだ。例えば、日本の検査体制が不十分なら韓国が検査キットを提供したり、日本の治療薬開発の知見や情報を共有するといった具合だ。いまこそ、日本と韓国が積極的に情報交換を行い、手を携える好機とすべきだ」(聞き手=但田洋平)

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