政府が100%出資する日本貿易保険(NEXI)は19日、新型コロナウイルスの感染拡大により日本企業が海外事業や輸出で損失が生じた場合、その損失を補償すると発表した。事業休止や工場・事業所の閉鎖などによる損失などが主な対象。民間の損害保険会社の場合、感染症は免責扱いとなるが、公的貿易保険機関として日本企業の事業を支援する。
 海外投資保険、輸出保険、外国公的保険機関との再保険ネットワークなどを機動的に活用、民間では取れないリスクを取る。具体的には、新型コロナ感染拡大による投資先企業の事業休止、輸出仕向地港湾での荷揚げ遅延による滞船料発生、輸出先企業からの3カ月以上の代金支払い遅延などの損失もカバーする。
 投資先企業の休業についての具体的事例として、上海市に進出する企業の入居するビルが閉鎖され、事業再開まで1カ月超を要したケースがある。NEXIは2014年に投資保険の保険金支払い要件を休業期間「3カ月以上」から「1カ月以上」に改訂しており、このケースは保険対象となる。
 輸出保険では、貿易商社が上海に向けて製品を出荷したが、港の作業者が不足して荷揚げが遅延し滞船料が発生したケースがある。この場合も滞船料は「増加費用特約」により保険対象となる。
 NEXIは今回、中国、韓国、イタリアなど感染が広がっている国を含めた全ての国における、新たな輸出や投資案件の保険も引き受ける姿勢を打ち出した。既存の投資案件で今後に損害発生が懸念される案件にも対応する。
 また、新たにグローバルなサプライチェーンが絡む事故についても日本企業の損失を補償する。例えば、中国からの部品供給が途絶してタイの工場が休止となるようなケースが対象。相当因果関係が国境を越える場合のルールを決め、複雑化するグローバルサプライチェーンにおける日系企業の事業継続を支援する。
 NEXIの黒田篤郎社長は同日の会見で「今後の世界的感染拡大による影響は計り知れない。日本企業のグローバルサプライチェーンが途切れることのないよう、投資保険、輸出保険、再保険を通じて、一歩踏み込んだかたちで支援していく」と強調。これまで保険契約をしていない企業にもNEXIの活用を働きかけていく考え。
 1月下旬以降、NEXIには50件以上の相談が寄せられている。現時点で保険請求はないが、今後は請求が具体化すると予想される。

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