朝、車に道具と荷物を押し込み、田舎の曲がりくねった道を颯爽と飛ばす。田園地帯を抜け、林道の坂道を暫く駆け上ると、丘陵地に広がる人工の緑地にたどり着く。集まった4人で日がな棒を振り回し、ときに嬌声を発したのち風呂で汗を流す。再び車を駆り、田舎の食堂で夕食を採りながら反省会をし、家路に就く▼これを幸せかつ充実した休日と捉えれば、確かにその通りといえる。一方で、共同体の団体行動意識に従い、丸一日を費やした主体性のない時間といえば、そういう見方も成り立つ。本人以外、とくに家族は後者の解釈を支持する傾向が強い▼鎮静化の気配どころか、さらに勢いを増している新型コロナウイルス。弊社の上海支局はいまだ再稼働できず、現地社員は自宅待機、特派員は東京本社での遠隔業務を余儀なくされている。生産拠点を持つ企業の現場の苦労、駐在者の困難を思うと頭が下がる▼今回のウイルス感染の拡大は、小社のような時代遅れの会社にも、テレワークをはじめとする働き方改革の必要性を改めて認識させている。所属のオフィスに出勤し、所定の机で働くのが当たり前。そういう価値観、固定観念は、事が起こってみれば何の根拠もない。とはいえ、自宅で書く原稿は大概は冴えない。本稿もその良いサインプルとなった。(20・2・18)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る