新型コロナウイルスのパンデミック(世界的感染流行)を収束させるには、全世界で150億本以上のワクチンが必要-。IFPMA(国際製薬団体連合会)がこのほどウェブ開催したメディア・ブリーフィングで、欧米の製薬トップらがワクチンの実用化に向けた課題などを議論した。1、2社のワクチンで世界の需要は満たせず、複数のワクチンを各社が提携しながら実用化する重要性を改めて確認した。また、感染者が減少している地域の臨床試験継続が難しくなる可能性や、ワクチン製剤を充填する容器不足なども報告された。

 IFPMAのトーマス・クエニ事務局長によると、パンデミック収束には全世界で150億本以上のワクチンが必要という。10億本の供給計画を表明している米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のポール・ストッフルズCSO(最高科学責任者)も、「5~10種類のワクチンが必要」との見解を示した。英グラクソ・スミスクライン(GSK)も同様の考えで、同社は独自のアジュバント(免疫増強剤)を開発各社に提供することで量産に貢献する。

 今後の開発で課題になるのが、感染収束による開発の停滞。欧州や北米の感染者が急速に減少しているため、自然な設定(自然感染)での試験継続が難しくなる可能性がある。英アストラゼネカ(AZ)のパスカル・ソリオCEOは、ヒューマン・チャレンジ試験(故意に感染させる試験)へ切り替えることは倫理的に難しいとの見解で、「(開発は)時間との戦いだ」と強調した。同社は来月から米国で3万人規模、米ファイザーも欧米で2万~3万人規模の臨床試験を始める計画だ。

 ソリオCEOらによると、ワクチン製剤の量産に向けては欧米アジア各地に生産拠点や提携先を確保できそうだが、ワクチンを充填するバイアル不足が課題。通常は1バイアルに1接種分を充填するが、同5~10接種分に増やすことを検討している。ファイザーのアルバート・ブーラCEOは、「これが受け入れられれば、製造に関するボトルネックの大部分を解決できる」と話した。

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