英アストラゼネカ(AZ)のパスカル・ソリオ最高経営責任者(CEO)は10日、開発中の新型コロナウイルスワクチン「AZD1222」を年内に承認申請する計画は変わらないとの見通しを示した。臨床試験で原因不明の症状が報告されたため、先ごろすべての臨床試験を中断した。だが調査で安全性に問題がなければ近く試験を再開し、年内の承認申請は可能とみている。海外メディアが開催したオンラインイベントで明らかにした。

 AZD1222は、英国の臨床試験で原因不明の病状が出た症例が報告されたため、すべての臨床試験を自主的に中断している。ソリオCEOは、「安全性委員会の審査で試験の再開が認められれば、年末までに必要なデータがそろい、承認申請できるという見通しは変わらない」と話した。薬事当局の審査次第だが、「年内から年明けには供給開始できる。『年内』もまだあり得る」との見通しを示した。英フィナンシャル・タイムズは、今週中にも試験が再開される見込みと報じている。

 AZは当初、最短で9月にも承認申請できる可能性を示していた。その後、感染収束で症例登録に時間がかかる可能性をふまえ、申請時期を「年内」と幅を持たせていた。

 病状が報告されたのは英国試験に参加した女性1例。脊髄(せきずい)で炎症を起こす神経障害「横断性脊髄炎」との報道も出ているが、「最終的な診断結果はまだ出ていない」(ソリオCEO)とした。

 試験が中断されるのは2回目であることも分かった。7月に別の症例で神経症状が報告されたことを受け、一時中断。調査の結果、その症例は多発性硬化症を発症していることが判明したが、ワクチンとの因果関係は認められないと判断、試験を再開した。

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新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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