新型コロナウイルスワクチンの国内での保管が課題となっている。ファイザーとビオンテックが共同開発したワクチンはマイナス70度C前後の超低温で保管しなければならない。技術的な課題をどう克服するかが問われている。

 輸入したワクチンは一度、医薬品専用の倉庫に保管し、そこから接種場所に運ばれる。すでにマイナス70度C前後で運べるコンテナが開発されているので輸入は可能とされている。病院などに設置する超低温冷凍庫も政府がすでに発注ずみという。設置会場では断熱材入りの保冷箱にドライアイスを詰めて保管するという方法も検討されているようだ。

 問題は医薬品専用倉庫となる。医薬品を保管すためには医薬品製造業許可(包装・表示・保管)が必要となる。また、GMP(医薬品の製造と品質管理に関する国際基準)に適合していることが求められる。いずれも、一般医薬品、無菌医薬品、放射性医薬品、生物学的製剤の4つのカテゴリーに分かれているが、このワクチンは生物学的製剤のカテゴリーに入る。既存の倉庫で生物学的製剤のカテゴリーで医薬品製造業許可(包装・表示・保管)などを取得している倉庫もあるが、すでに他の医薬品で満床だったりコンタミを回避するため利用できない。また、マイナス70度C前後の超低温に対応できないといった状況のようだ。

 日立物流は医薬品専用施設が国内6拠点あり、7拠点目を建設中だが、マイナス70度C前後という技術的課題から新型コロナワクチンの輸送・保管については今のところ考えていないという。

 日本通運は医薬品サプライネットワーク構築の核となる国内4拠点を新設中。10月に九州医薬品センターが完成、西日本医薬品センターが12月、東日本と富山の医薬品センターが来年1月の完成を予定している。医薬品製造業許可(包装・表示・保管)とGMP適合認定を目指しているが、各拠点の取り扱い対象を公表していないことから生物学的製剤のカテゴリーでの取得についても非公表としている。

 「超低温倉庫は食品に多いが医薬品での利用は難しい。倉庫がどの地域にあるかといったことも重要となる」(厚生労働省担当者)そうだ。

 医療機関までの搬送は医薬品メーカーの責任となっており、倉庫も含めた物流網についても認められなければこのワクチンは製造承認されない。国内で接種が始まると期待されている来春の前までには物流網の構築をしておかなければならない。

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