北米の石油化学プロジェクトに新型コロナウイルス感染拡大の影響が出始めた。石油製品などの輸送事業を展開しているカナダのペンビナ・パイプラインは、クウェート国営石油子会社のペトロケミカル・インダストリーズ・カンパニー(PIC)とカナダ・アルバータ州で計画していた、プロパン脱水素(PDH)からポリプロピレン(PP)までの一貫工場の建設延期を決めた。設備投資を抑制することが狙い。シェルは米疾病対策センター(CDC)の指針に対応した感染防止策をより徹底するため、ペンシルベニア州における石化コンプレックスの建設を一時的に中断している。感染拡大が続いていることから、こうした動きがさらに広がる可能性を否定できない状況になっている。
 ペンビナはアルバータ州の石化プロジェクトに加えて、パイプラインやターミナルの増設計画などを延期し、2020年に計画していた設備投資額を9億~11億カナダドル(約690億円~850億円)削減する。当初の計画から40~50%減らすことになるという。
 石化プロジェクトは年55万トンのPPを生産するもので、ペンビナの総投資額は27億カナダドル。19年にPICと折半出資の合弁会社「カナダ・クウェート・ペトロケミカル・コーポレーション(CKPC)」を設立し、具体化に向けた取り組みを進めていた。廉価なプロパンを原料にしたプロジェクトで、23年下期に稼働を始める予定だった。
 アルバータ州政府は「石油化学製品多様化プログラム」などを推進し、投資に対して補助金を提供する施策を展開している。CKPCによるプロジェクトもその対象になっている。
 シェルはペンシルベニア州モナカにおける石化コンプレックスの建設を一時中断した。8000人以上が建設作業に従事しているという。感染防止策をより徹底し、施策を講じ終えた段階で建設を再開するとしている。同社は「作業員と近隣住民の健康が最優先事項」として一時中断を判断したとしている。
 同コンプレックスでは、マーセラスやユティカなど近隣のシェール層から調達する廉価なエタンを原料に、年150万トンのエチレンと同160万トンのポリエチレンを生産することになっている。21年下期の稼働を見込んでいる。
 このほか原油価格の急落を背景に、石油会社が設備投資を大幅に削減することを相次いで表明、このうちシェブロンは具体的な内容に言及していないものの、40億ドルの削減計画に化学分野を含めることを明らかにしている。

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