日本ロジスティクスシステム協会(JILS)はこのほど、新型コロナウイルスの感染拡大による物流への影響について緊急アンケート調査を実施した。それによると、物流企業で業務上の課題が発生したと答えた割合が50%を超過。感染拡大の報道以降、例年よりも物量が増加している商品として消毒薬や紙製品のほか、小中学校の休校を理由とする参考書などがあった。今後想定される課題として各種のリスク発生を想定したサプライチェーンの見直しなどをあげる企業が多くを占めた。
 今回のアンケートは、同協会の会員企業である荷主および物流企業の789社から回答のあった182社を有効回答としてまとめたもの。調査期間は3月11~13日。方法はWEB回答方式を採用している。

乗務員確保難しく

 同調査によると、新型コロナウイルス感染の拡大によって業務上での課題が「発生した」と回答した物流企業は全体の58%になった。発生した課題の具体的な事例として、運輸業で「一部の荷主企業で生産や出荷が大きく減少し、輸送量が減少し乗務員の水揚げ確保が難しくなった」や、「荷主企業から運転手のマスク着用を義務付けられたが、入手困難なため対応に苦慮している」などがあった。
 利用運送・物流管理業では「倉庫内作業・納品現場ではテレワークなどができないため、安全上の配慮がスタッフ部門のようにはできない」、「緊急輸送案件が急きょ航空会社の運休により、代替えルートの計画に苦慮している」などの意見が、物流子会社では「医療機関からの返品、返却品の扱いで出勤時間との兼ね合いによる出荷要請時間の1時間繰り上げ」「中国向けの輸出ストップ」などの切実な意見があった。
 感染拡大が報道されて以降、例年と比較して物量が増加している商品が「ある」と回答した物流企業は全体の44%になった。運輸業では一般向け加工食品、市販用の冷凍食品のほか航空貨物全般が、倉庫業では消毒薬、医療機器、紙製品などが増加した。物流子会社では休校によって参考書や長期保存可能な加工食が増加した。

車関連などで減少

 一方、物量が減少している商品が「ある」と回答した物流企業は全体の57%になった。運輸業で住設機器や自動車関連がとくに大幅に減ったと回答したほか、中国からの電子部品やアパレル関連、建築資材、家具なども減少。倉庫業では中国からの輸入貨物全般、コンテナなどが減少した。物流子会社ではイベントなどの搬入、搬出業務や会場で使われる床材の物量も大幅に減少している。
 今後想定される課題として、製造業の「原材料の調達ができなくなった場合の対応」「各種リスク発生を想定した部品調達、商品供給体制の見直し」などをあげた。流通業では物流現場のオペレーションやサプライチェーンへの影響を懸念している。運輸業は輸出入品の物量減少、物流子会社では製造における不良在庫の問題を指摘する意見があった。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

新型コロナウイルスの最新記事もっと見る