新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が、中国の農業市場にも影響を及ぼしている。小麦の施肥の時期を迎えるなか、包装資材や人手の不足、物流網のまひにより、肥料の生産、搬送が難しくなっている。農業の盛んな河南省は肥料生産の稼働率が例年の5割程度に落ち込んでいるという。中国石油・化学工業連合会(CPCIF)は春耕への影響を最小限に抑えるための通知を出し、各省でも特別な通行証の発行に乗り出すなど事態改善に躍起だ。
 中国は小麦の世界最大の生産国。3月の種まきの季節を前に、農家は肥料や農薬の入手に頭を悩ませている。新型肺炎の影響を受けて省や直轄市を越えた輸送が困難となっているからだ。「農民の不満を抑えるためにも、各省政府も肥料、農薬の生産や、供給の安定確保に神経をとがらせている」(日系化学メーカー)。
 CPCIFは、春耕への影響を最小限に抑えるための通知を出し、市場分析と監視を強化しながら、化学肥料や農薬、ディーゼルなど春の耕作に必要な製品および川下製品の原料供給の確保が必要だと指摘。各業界団体にはとくに、製品の生産や原材料の供給、物流と輸送、資金などの面で企業が直面する困難に目を光らせ、産業チェーンの管理を徹底するよう呼びかけた。企業には買いだめや理不尽な値上げをしないよう求めている。
 農業大省と呼ばれる河南省は、本来なら肥料生産のピーク期にあるが、現地報道によると、足元の稼働率は50%、一部の企業は30%未満に追い込まれているという。ドライバーや生産現場での人手不足、省をまたいでのトラック輸送が難しい現状にあり、包装資材や原材料不足も深刻だ。
 肥料大手の心連心化学工業集団は輸送が困難なため、在庫が積み上がっている状況。河南晋開集団も交通規制により、肥料や基礎化学品を工場から出荷できず、原料確保も困難な状況が続いているという。
 農業資材メーカーが経営難に直面し、農家が肥料を確保できない現状を打破すべく、河南省などは生産、消費側双方の状況把握に努め、特別な通行証を発行したり、製品包装に人手を提供するなどの支援に乗り出した。CPCIFは、業界の各所で同様の事例が発生しつつあるとし、第13次5カ年計画(16年~)最終年の目標を達成すべく、業界が一体となって難局を乗り切るよう訴えている。(但田洋平)

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