祖業であるエラストマー事業の売却を決めたJSR。デジタルソリューションとライフサイエンスに資源を集中していく方針は広く理解されていたものの、それでも「日本合成ゴム」として発足した同社が事業売却の決断にいたったことには驚いた関係者も多かったと思われる。なぜエラストマー事業を売却しなければならなかったのか。またENEOSへの売却および韓国合弁会社の株式売却で得た資金をどのように使うのか。川橋信夫社長兼COOに取材した。

 - 改めてエラストマー事業の売却を決断した決定的理由について。

 「2~3年かけてすべての事業をレビューした結果、強みであるイノベーション力、技術力が対価となって跳ね返ってくる領域を考えると、デジタルソリューションとライフサイエンス。この2つの領域に傾注すべきだ。エラストマーの事業は長い目でみてダウントレンドは避けられない。新興国の増設やコンビナートの問題、日本の市場動向をみても厳しく、その中で勝ち残るには、技術的にも設備的にも投資を継続していくことが不可欠だ。S-SBRは1~2年後には能力増強の投資が必要かもしれない。しかし、3つの事業すべてを成長させるのは、投資効率を考えても難しい。エラストマー事業は将来的にも価値があり、成長性もあるが、それを後押ししていただける事業体にやっていただく方が望ましいと考えた」
 「なぜ合弁会社の形にしなかったかだが、合弁は腰掛けという意識になりやすく、中途半端で責任があいまいになる。事業を本気で運営するには、確固たる主導権を持つことが必要だ」

 - ROIC(投下資本利益率)の上がりにくさも売却の理由となったのでしょうか。続きは本紙で

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