結晶というと硬くて安定的なイメージがあるが、弱い刺激に応答して発光など目に見える変化を起こす物質群がある。それらを「ソフトクリスタル」と命名して体系的に研究しているのが日本で、文部科学省・科研費の新学術領域研究に採択され100名を超す研究者が集結している▼先駆けとなったのは領域代表を務める加藤昌子氏(関西学院大学教授)らの発見。白金複核錯体にアルコール蒸気をさらすと結晶構造が変わり発光領域が赤色から近赤外にシフト。クロロホルム蒸気にさらすと元に戻る▼外部刺激によって可逆的に光物性が変化することをクロミズムと呼ぶ。すりつぶしなど機械的刺激で色が変化するのはメカノクロミズム。結晶を押し曲げると発光色が変化する超弾性発光クロミズムも見いだされている▼ソフトクリスタルは液晶とは異なり結晶の秩序性を持っているため、新しい機能を発現する素材として期待されている。高温や高圧ではなく室温付近の刺激で変化するのも魅力の一つ▼新学術領域研究の活動は2021年度で終了するが、研究者の一人は「今は日本がリードしているが、海外勢が追いかけてくるかもしれない。研究を継続してリードを保っていくことが重要」と強調する。今後は企業と積極的に連携して実用化に向けた取り組みを進めたいとしている。(21・7・16)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る