日本ペイントホールディングス(HD)はこのほど、欧州とインドの計3子会社の全株式をウットラムグループに譲渡することを発表した。欧州の自動車用事業を担うNPAE(日本ペイント・オートモーティブユーロ)、インドの各種事業を担うBNPA(バーガー日本ペイントオートモーティブコーティングス)、NPI(日本ペイント・インディア)の3社。譲渡価額は合計で約186億円。

 譲渡の背景は、自動車事業がコロナ禍による影響をはじめ半導体不足、原材料価格の高騰などで環境が大きく悪化し、戦略の見直しを余儀なくされたことが挙げられる。中長期的な成長には事業再編や強化への大幅な投資が必要と判断したという。インドの建築用や自動車補修用事業も、コロナ禍による市況低迷や原材料価格の高騰を受けているほか、今後の競合他社との競争激化も見込まれ、厳しい事業環境に置かれている。中長期的にインド市場での存在感を向上させるには、更なる体制強化や大胆なプロモーションの施策が必要と判断した。

 今後のM&A推進を考慮すると、短期的に財務上の負担が大きい上に、各種の施策が株主価値の最大化に資さない可能性を懸念し、今回の決定に踏み切った。ただ、第三者への売却は欧州やインドにおける当社グループの将来の事業戦略の選択肢を大きく限定させることになると判断した。

 今回の譲渡により、中長期での持続的成長を万全にするほか、短期的な再建にかかる追加投資や費用はウットラムグループが負うことでリスク分散も図る。また、同社から経営の継続支援する構えで、同社グループから経営陣を派遣するとともに事業運営のモニタリングも行う。

 日本ペイントHDは、今回の譲渡損益が2021年12月期連結業績に与える影響は軽微と見込む。21年8月1日から連結業績への反映を想定。売上収益が144億円減、営業利益は29億円増、税引前利益は29億円増、純利益は29億円増とする。

 欧州統括会社であるNPE(日本ペイントユーロ)は解散及び清算する。今年4月に欧州での自動車用塗料事業の競争力を強化するために事業再編を実施した。新体制ではNPEの子会社であるNPAEが欧州本社として運用を開始しており、NPEとしての役割を終えたことが理由となる。

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