米トランプ大統領の任期が終了する。諸外国、とりわけ大国の政治家をみるにつけ、彼らの目的は自分が勝つことであり、そのためにはいかなる手段も辞さないと思い知る。自分、あるいは自分の仲間以外に対する礼節、思いやり、謙虚さを著しく欠いている。まるで幼児のようだ▼スポーツの世界もそうだ。日本では相撲も柔道も剣道も、目的はただ勝つことではない。その土台には礼節や謙虚さが存在する。本当の目的は、高い人格を形成することにあるからだ。しかし、これらの競技も国際大会では単に勝ち負けを競う、なり振りかまわぬ乱戦と化している▼日本人の礼節や謙虚さは、ややもすると過剰で、国際社会を生き抜くうえでむしろ弊害と指摘される。本当にそうだろうか。今こそ人類は、謙虚な気持ちで地球やそこに棲む全ての生物、あるいは世界の人々と向き合う必要があるはずだ。そうしたなかで、内外で活躍する日本人の多くは、謙虚さや礼節を備えている。その姿はとても美しいと感じる▼一方で、若いスポーツ選手や芸能人のインタビューでは、ときに違和感を感じることもある。それは謙譲語を使わないことだ。人前で自分の親を「お父さん」「お母さん」と呼ぶのは流行なのだろうか。それとも彼らは、まだ自分を大人と認識しないほど謙虚なのだろうか。(21・1・19)

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