日本触媒と三洋化成は21日、経営統合を中止すると発表した。2019年11月下旬の経営統合にかかわる最終契約締結以降、新型コロナウイルスの世界的大流行など両社の事業を取り巻く環境が急速かつ大きく変化したことで、経営統合の実施は困難と判断した。今後、両社は成長軌道に戻すことを最優先課題とする。

 21日、取材に応じた日本触媒の五嶋祐治朗社長は、「三洋化成の安藤孝夫社長とともに苦渋の決断を下すことになった。経営統合の期待に応えることができず申し訳ない」と語った。新型コロナなどにより世界経済が低迷し、事業活動が不振に陥り業績が悪化。株式移転比率など両社の株主が納得のいく経営統合の条件を決めることができず、「経営統合をもう少し先延ばしにするという案も上がった」。ただ、「収束は見通せず、いつになったら経営統合の協議を再開できるのか分からず、ずるずる引きずるよりは一度白紙に戻した方がいい」という結論にいたった。日本触媒は「2年かけて回復させる」など当面、両社は業績立て直しに全力を注ぐことになる。

 経営統合は中止となったが、「以前に増して協力し合えることは一緒にやろうということで意見は一致している」という。界面活性剤に使われる酸化エチレンといった原料面や、三洋化成グループが大型製品に育て上げようとしている新型リチウムイオン電池(LiB)「オールポリマーバッテリー」をはじめとした新規製品・事業面での協働が期待される。

 「けんか別れではない」ことから、両社が再び成長路線を歩み、収益基盤が安定すれば、経営統合の話題が上がる可能性は否定できない。

 両社は19年5月29日、対等精神に基づく経営統合に向けて検討を進めていくことで基本合意。同年11月29日に最終契約を締結した。計画では、新設する統合持株会社「Synfomix」(シンフォミクス)の傘下に日本触媒と三洋化成が入り、2年後をめどに合併することを予定していた。

 両社が一体となることで、さまざまな製品・事業で相乗効果が期待されていた。両社が手がける紙おむつの吸収材料などに用いられる高吸水性樹脂(SAP)は競争力の強化が見込まれ、LiB、医薬・医療機器といったメディカル、化粧品などそれぞれが注力している育成分野でもシナジーによる成果が所期されていた。

 ただ、最終契約締結以降、原材料価格および製品価格の変動や、新型コロナウイルスの世界的大流行にともなう経済情勢の悪化などにより今春に株式移転比率の見直しと経営統合の予定時期を21年4月1日に延期すると発表。その後も事業環境は改善しないこともあってか、経営統合は難しいという結論にいたった。

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