一報に触れて、驚きとともに、そこまで追い込んだ外部環境の悪さを痛感した。中止という結末だった日本触媒と三洋化成の経営統合は、業界再編の引き金になると期待された。存在感のある企業同士の経営統合で強みと課題を相互補完し、規模だけではない未知なる可能性を大いに秘めていた▼新型コロナウイルスの影響など昨年5月の統合発表時点と前提がかなり変わった点では、タイミングが悪かったと言わざるを得ない。今年4月にもコロナの影響や原材料高騰を背景に、事業環境の見通しが不透明として経営統合の延期を発表していた▼今後、日本触媒はまず業績立て直しに全力を挙げる。三洋化成は期待する新製品・新事業などを糧に単独での成長を目指す。両社は引き続き良好な関係を維持していく。統合に向けた準備期間の間に、お互いが自社の強み・弱みを再認識できたはず。それを財産として生かして欲しい▼日本のファインスペシャリティ企業は、得意とする高付加価値な技術・製品に磨きをかけ差別化を図ってきた。一方、化学産業全体をみると群雄割拠の状態だ。世界で闘うためにも技術力を補完し合い、一定規模を追求する再編は有効な手段だ。取り巻く環境はいぜん厳しい。だが、今回の決定が化学産業の再編の遅れにつながらないことを願ってやまない。(20・10・29)

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