旭化成や島根大学などは17日、新規新型コロナウイルスワクチンの開発に成功し、特許を出願したと発表した。旭化成の、医薬品を体内に効率的に運ぶ「ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)」新規基材「ヒアルロン酸ナノゲル(HAナノゲル)」を用いた。生体由来材料を基にしたワクチンで、副反応の起きる可能性が極めて低いと想定される。今後、製薬会社との協業で商用化を目指す。

 ヒアルロン酸ナノゲルは、ヒアルロン酸に部分的にコレステロールが修飾されたヒアルロン酸誘導体。今回開発に成功したのは組み替えたんぱく質ワクチンで、DDSに生体に存在する材料で構成されたHAナノゲルを用いたことで副反応がおきにくいと期待される。

 2回接種後のマウスを使った実験では、ウイルス中和活性を有する抗体価の上昇や1年以上の持続期間が確認された。ヒアルロン酸ナノゲルを用いることでリンパ節の抗原提示細胞に効率良く運ばれていると考えられるという。

 18日に開いた会見で、島根大学医学部浦野健教授は「実用化に向けて製薬企業に参画してもらい共同で進めていきたい」と方針を示した。旭化成・添加剤事業部の勝又徹氏はヒアルロン酸ナノゲルについて「GMP(医薬品製造・品質管理基準)製造を2023年頃開始する予定」と計画を明かし「新型コロナワクチンの非臨床・臨床試験、さらに新興感染症のワクチン開発に対応した生産体制を整備する」と述べた。

 今回の共同研究は、旭化成、たんぱく質や接種実験を担った島根大学のほか、京都大学が免疫組織への局在解析、三重大学が組織性免疫性解析、長崎大学熱帯医学研究所がウイルス中和活性解析を担当した。日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬基盤推進研究事業」に採択され、今後製薬企業も加えて事業化を推し進めることになる。

 浦野教授は「今回の共同研究は新型コロナだけでなく、今後起こるであろう新興感染症に対してワクチンを開発するシステムづくりを目的としている。新型コロナワクチンをモデルケースとして枠組みを構築したい」と語った。

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