昭和電工は6日、パワー半導体で世界最大手の独インフィニオンテクノロジーとの間で、パワー半導体材料である炭化ケイ素(SiC)エピタキシャルウエハーの長期販売と共同開発に関する契約を結んだと発表した。昭和電工はインフィニオンの持つ幅広いパワー半導体製品への搭載拡大が期待できる。両社の知見を合わせることで、品質やコスト競争力を高める技術開発の加速も狙う。

 長期販売の契約期間は延長オプション付きの2年。昭和電工は従来もインフィニオンと取引関係にあったが、長期販売契約は今回が初めて。昭和電工にとってはパワー半導体で約2割の世界シェアを握るインフィニオン社製品への搭載拡大やプレゼンス向上が期待できる。インフィニオンには高成長が見込まれるSiCパワー半導体において材料の安定調達先が確保できるメリットがある。

 SiCエピタキシャルウエハーはSiCウエハーの表面にSiCの薄膜層を形成する。昭和電工はウエハーの特性を左右する窒素を均一にドープ(添加)する技術や、デバイスの歩留まりに影響する表面欠陥密度を下げる技術に定評があり、SiCエピタキシャルウエハーの外販で世界シェア3割を握る最大手。生産拠点の秩父事業所(埼玉県秩父市)では月産9000枚の生産能力を持つ。

 SiCパワー半導体はシリコン半導体に比べ高い電圧や大電流での駆動が可能で、電力損失も大幅に減らせる。電気自動車(EV)の高速充電スタンド用コンバーター、システムサーバーの電源や鉄道車両、太陽光発電システム用インバーターなどで採用され、今後はEVのパワーコントロールユニットでも本格搭載が見込まれる。国内調査会社によると、SiCパワー半導体の世界市場は2025年に1000億円と19年比で2・3倍に拡大するとの予測もある。

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