きょうから3月。春はもうすぐそこだ。清少納言は枕草子で「春は曙」と書いている。確かに夜明けの空は夜空の青と朝の日差しが混ざって紫色になり美しいが、彼女が生きた1000年前は室内はかなり暗かったはずだ。自然の神々しい光がさぞ有り難かったことだろう▼コロナ前、宇宙を感じられると噂の奥日光の戦場ヶ原へ満天の星空を体感しに勇んで出掛けたが、生憎の曇り空。真っ暗闇の草原に怖くなって急いで帰った覚えがある。暗闇は何も見えないので、何かいそうな気がする。古代ローマのカエサルは、暗闇のなか敵に出くわすのではと怯える自身の軍団を見て「人は見えないものに恐怖する」とガリア戦記に書いている▼電気はあらゆる物事を変え、これから先さらに社会を大きく変えるに違いない。しかし今のままでは、数十年先には今のような電気に囲まれた快適な暮らしが失われかねない。数十年後100億の人類が快適な生活を送るにはどう電気を確保するのか。再生可能エネや水素活用を広げるには何が必要か。原子力はどうすればいいのか▼人類は自然や地球の恩恵を我がものとしてきた。知恵を総動員しイノベーションを起こし、国を越え手を携え、そろそろ地球に恩返ししなければならない。暗闇に怯える生活に戻る覚悟があるなら別だが。(21・3・1)

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