ご存じの通り、日本は世界有数の森林国、林産資源大国である。森林面積は国土の3分の2に当たる約2500万ヘクタール。うち人工林は約1000万ヘクタール。林野庁によると、木質バイオマスのうち、製材工場等残材と建設発生木材は、製紙原料などとしてほぼ利用済みだが、間伐材などの林地残材の利用率は低位にあるという▼間伐材などのうち、形や質的に劣るため建築などの用材として使えない原木は、主に製紙用チップやバイオマス発電所用チップとして利用される。圃場灌漑用、舗装用など展開用途は様々ある▼ここに有力な用途が加わろうとしている。サントリーグループは、米アネロテックと進めてきた植物由来原料100%使用PETボトルの開発に成功した。パラキシレンを植物由来素材で生成するのは既存技術では素材を複数段階に渡って変換する必要がある。新技術は熱分解と触媒反応により、ワンステップで生成できるという。非可食の木材チップのみから生成しているというのもポイントだ▼豊富な林産資源を背景に日本でこういった取り組みが進むのは非常に合理的だ。プロセス全体を見渡せば、部分的にエネルギー消費が大きいところもあるかもしれないが、全体としてどうかの観点を持ちたい。消費者への発信力の強い企業の取り組み。その啓蒙効果に期待している。(21・12・8)

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