国でも企業でもスポーツチームでも、組織全体が一丸となって取り組むことができれば、さまざまな苦難を乗り越え、高い目標をも達成できる。1人では到底、達成し得ないことであっても、目標に向かって進む組織の一員として貢献することはできる▼一方で、ある特定の命題が金科玉条のごとく祭り上げられるとき、組織は取り返しのつかない過ちを犯す。そうした惨事を何度も経験してきた。しかし苦い経験、教訓は、人類が陥る狂信性の前にかき消されてしまう。世界大戦が終結して間もなく、新たな世界大戦を引き起こしたように▼「融通」というものが利かなくなり、事態が硬直化したときが分かれ目だ。ちょっと待て、他にやり方はないのか。それが本当に正しい選択なのか。思考からそのような冷静さ、柔軟さが欠落し、お題目が目的化して理不尽な決まりごとがまかり通る▼さすがにそれは可笑しいでしょ。そういう意見が通じなくなる。融通とか臨機応変とか、そういう感覚が消えてしまうのはなぜか。深く考えもせず、がなり立てる誰かの意見に従ってしまうのはなぜなのだろうか▼カーボンニュートラル。目下の人類の金科玉条である。本当にこれで良いのだろうか。極めて高い目標に挑むからこそ、もう一度冷静に考え、策を練るべきではないか。(21・11・30)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

 

精留塔の最新記事もっと見る