一般紙の読者投稿ページはニュースやさまざまな出来事に対して、新聞記者とは異なった見方や考え方が度々示されていて面白い。投稿する方々はきっと新聞を熱心に読んでいるのだろうと少し嬉しくもなったりする▼先日、80歳台男性の少し毛色が違った投稿に目が留まった。近年、我慢できない食べ物がキュウリだという。今のキュウリは傷まないように早採りしているため味も香りもなく、ほとんどの人がキュウリ本来の味を知らなくなったに違いないと主張する▼畑から失敬してきた昔話を織り交ぜながら、憤懣やるかたない思いは伝わってきた。ただ、他にもたくさんの野菜や果実があるのに、何故キュウリだったのだろうか。一般論でいえば、品種改良などによって味は昔に比べて良くなっているはずだ▼誰に対して怒っているのか分からずじまいだったことも引っかかった。堕落(?)してしまった農家か流通業者か。それとも、そんなキュウリを許している一般消費者なのか。しかし、そんなことはどうでもよかったのかもしれない▼誰にでも「思い出の味」がある。それはその人だけの味であるため、他人にはなかなか理解することができない。ハウス栽培で一年中食べられるようになったが、彼にとって少し苦みがあって夏場に熟したのがあるべきキュウリなのだろう。(20・3・6)

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