東レは26日、高い即効性を持つ抗ウイルス粒子を開発したと発表した。酸化セリウムの粒子表面を特定の分子で被覆することで、新型コロナウイルス(デルタ株)を秒速で99・9%以上不活化させることに成功し、従来の金属系抗ウイルス剤と比べて100倍以上の即効性を実現した。東レの樹脂やフィルム、繊維に混合させるほか、建築内装や食品包装材などに塗布する分散液としての活用を視野に入れ、2~3年以内の製品販売、2030年には売上高100億円規模を期待する。

 従来のウイルス感染対策をめぐっては、消毒液による消毒は短時間で揮発するため持続性に課題があり、金属系抗ウイルス剤では不活化に時間を要し、即効性と持続性の両立の課題があった。

 開発した抗ウイルス粒子は、ウイルスを引き寄せて粒子表面に吸着させ、酸化分解する機能を持ち、抗ウイルス試験ではデルタ株を秒速で不活化させることを確認した。同社の先端融合研究所で、当初は遺伝子やたんぱく質を安定化させる技術を開発していたが、その過程で安定化とは逆の分解機能についての知見が得られ、今回の開発につながったという。従来の金属イオンの徐放による不活化メカニズムとは異なるため、長時間の持続性も見込まれる。耐変色性、耐腐食性などに優れ、樹脂全般に混合させて手すりやつり革など、繊維製品としてはマスクやカーテンなど、多角展開を想定する。

 新型コロナウイルスのデルタ株に加え、そのほかの変異株や、ノロウイルスなど既存のアルコール消毒などへの抵抗性が強いノンエンベロープウイルスに対する検証も進める。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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