東京大学大学院の情報理工学系研究科が「ポスト・コロナの新たな情報化社会へ向けての提言」を発表した。副題は「もとのシステムに戻さない。」▼この提言の発表に合わせオンライン・シンポジウムも開催された。YouTubeで視聴することができる。提言を読んでも、このシンポジウムを視聴しても、情報・通信、計算機系学問の高度な専門用語が押し寄せてきて、読み通したり、聞き通したりするのにはそれなりの忍耐がいる▼そういう語彙の奔流の中で、渦潮の中心のように静かに存在感をたたえているキーワードが、「もとのシステムにもどさない。」と「三方良し」という簡明でありながら直観的な言葉である▼ポスト・コロナにおいては、テレワークなどの活動形態を維持、さらに進化させるべきだとし、もとに戻ることは退化であると強調。さらに、短期利益の最大化を主なKPIとする研究開発や社会産業活動は、相互利益(三方良し)、適応性・柔軟性、対称性、持続性など多様なKPIを同時に満足するような新しい社会システムに進化していかなければならないとする▼シンポジウムでは「魂の入っていなかったIT化」「ソクラテスとトリックスターを両脇にかかえながら、情報化社会を低い姿勢でデザインする」など、さすがの卓見も盛りだくさんである。(20・7・8)

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