栄研化学は新型コロナウイルス検査薬の海外展開に乗り出す。独自の遺伝子増幅技術「LAMP法」を用い、鼻の奥の粘液や唾液を検体に1時間以内に感染の有無を判定できる検査薬。10月から試薬の供給を始めるインドを皮切りに、欧州や新興諸国などを市場開拓する。生産能力は現状比2倍の月100万テスト分への拡大を検討する。コロナ禍にともなう外来患者の減少などで既存の臨床検査薬が伸び悩むなか、需要旺盛なコロナ向けに商機を見いだす。

 新型コロナウイルスの治療薬やワクチンが実用化され、全世界に行き渡るとみられる2024年頃までは流行が収まらないとの予測がある。世界経済がコロナ以前の状態に回復するまでも数年を要するとされ、それまで検査薬を含めて感染対策の需要は堅調に推移する見通し。とりわけ欧米やインドは感染拡大が深刻で、検査薬の供給要請が強まる傾向にある。

 栄研化学にも、海外から130件近くの引き合いがあるという。このため、同社では日本の需要に対応したうえで海外にも供給を始める。日本政府が取り組む海外支援への協力や現地企業との提携を通じて展開する。欧州でのCEマーク認証取得や体外診断用医薬品の承認を得ることも計画する。

 インド向けは現地企業に試薬原料などを供給するビジネスを10月から開始する。欧州でも提携協議を進めており、2020年度中に出荷を始める計画。

 同社は過去に米3MなどとLAMP法のライセンス契約を結んでいる。こうした既存の提携契約に抵触しない範囲で海外需要を取り込んでいく。LAMP法をコロナ検査に利用する特許の使用権などを許諾する契約も海外向けに9件が実現した。さらに30件程度が交渉中にあり、ライセンス供与による収益機会も広げる方針。

 日本だけでなく海外需要を取り込むために、生産能力を増やす。那須事業所(栃木県)ではコロナ検査薬の生産能力を従来の2・5倍の月産50万テスト分に増強したばかりだが、感染拡大が続くインド向けは20万テスト程度の需要を見込めるという。欧州などの需要にも対応するにはさらに2倍に増産する必要があるとみている。

 栄研化学の21年3月期売上高は341億円と前期比6・8%の減少を見込む。部門別に分解するとコロナ検査薬が含まれる遺伝子関連が同321・4%増の42億円に急拡大するのに対して、主力の便潜血検査薬や免疫血清検査薬などは軒並み減収を余儀なくされる。コロナ禍で検査を受ける外来患者が国内外で減少し、コロナ前の水準に回復するにはまだ時間がかかる。

 日本ではコロナ検査薬を4月に発売し、専用の測定装置は累計で約650施設に導入された。LAMP法を用い、複数のウイルス遺伝子を同時に検出できる自動核酸検査装置「シンプローバ」向けには、今年冬の流行シーズンに備え、インフルエンザと新型コロナウイルスを同時に検査できる検査薬を開発する。

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