植物工場の栽培技術を開発しているベンチャー企業の社長から興味深い話を聞いたことがある。日本では健康志向もあってカップサラダの市場が伸びている。野菜の需要が増える一方で供給はどうなるのか。例えばレタス。夏場は高原で栽培されているが、25度C以下の気温が必要になるためだ▼しかし温暖化が進行すると、10年後には標高1500メートル以上でないと栽培が難しくなるという。栽培可能な標高がどんどん高くなれば安定供給に支障をきたすかもしれない▼そこで植物工場の出番となる訳だが、現状では採算性に苦しむ工場がたくさんある。LED照明や空調といったエネルギーコストを吸収し切れないことが原因なようだ。それなら自動化ということでITを導入する企業もあるようだが、かえってコストがかさみ損益分岐点を上げるだけと指摘する▼コストを下げ収益性を高めるには、なるべく短い期間で大きいものを作ること。意外だったのは「根」に注目したことだ。液肥を定期的に多く流すと根が刺激を受け、成長ホルモンの分泌が促進される。光合成の効率が高まり電気代が節約できる▼彼によれば一つの作物で100点を目指すのではなく、どんな作物でも90点を取れるようにすることが目標。固定観念に縛られない発想が課題克服の鍵を握る例といえるだろう。(20・2・14)

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