臨床検査試薬などを製造販売する極東製薬工業(東京都中央区)は、抗体試薬事業を立ち上げる。第1弾として、抗体開発を手がける米スタートアップのアブウィズバイオ(カリフォルニア州)と新型コロナウイルスの感染の有無を判定する抗原検査キットに用いる試薬を共同で開発。製薬会社や診断薬メーカーのほか、大学や研究機関向けに12月から販売する。足元の業績は堅調に推移するが、独自技術を生かして新たな価値を生み出す多角化戦略を推進。事業の幅を広げて収益の拡大を目指す。

 発売するのは、新型コロナウイルスに対する組み換えウサギモノクローナル抗体。今春から開発に着手し、アブウィズバイオが抗体の作製を担当。極東製薬工業が作製した抗体の評価と解析を行った。極東製薬工業は2019年にアブウィズバイオとの間で同社が提供するサービスの国内における独占的販売契約を締結している。

 希望小売価格は200マイクロリットルで税別13万3000円。研究用途はライセンスフリーだが、商用利用の場合は実施許諾料が別途必要になる。極東製薬工業は23年までに国内で年間8000万円程度の売り上げを目指す。

 新型コロナの世界的な感染拡大にともない、各社が検査手法の開発・販売を進めるなか、PCR検査以外の選択肢としては抗体検査と抗原検査の2つに大別できる。両社は抗原検査に使用するための抗体を開発した。

 抗原検査は感染有無の診断に有用であるが、検出感度に課題が残る。PCR検査では陽性でも、そのうちの6割程度が抗原検査で陰性であったとの初期報告もあり、抗原検査に用いる抗体の性能向上が求められている。

 抗原検査キットには主にマウスモノクローナル抗体が使われているが、マウスに比べてウサギの方が高感度で抗特異性を有する抗体が取得可能といわれる。ウサギ由来のモノクローナル抗体を取得するのは難しいとされてきたが、「アブウィズバイオは得意としており、その技術が利用できると考えて開発に着手した」(極東製薬工業)という。

 需要獲得に向けて「方法が違うため単純比較はできないが、他社品に比べて高感度で特異性も高い」としたうえで、「イムノクロマト法や化学発光法を原理とする自動分析装置での利活用が考えられる」とみる。「高感度なイムノクロマト法が開発されれば、医療従事者の負担が減ると同時に治療方針の早期決定が可能となり、患者の精神的負担の軽減に貢献できる可能性がある」と期待を寄せる。

 アブウィズバイオでは診断薬や治療薬に応用可能な抗体技術を持ち、実績もある。抗原検出用抗体だけでなく、今後は新型コロナの治療に使用できるような感染抑制のための中和抗体の開発も進める予定だ。

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