横浜市立大学の梁明秀教授と竹内一郎教授らは9日、横浜市内で会見し、新型コロナウイルスの抗ウイルス抗体を検出する技術を開発したと発表した。ELISA法とイムノクロマト法を用いて、患者血清中からIgG抗体を検出する。感染既往歴が判定できるのも特徴。今後、市内の病院などと協力し、症例数を積み上げると同時に、関東化学と連携し、臨床現場で使える試薬キット化を目指す。
 梁教授が開発したコムギ無細胞たんぱく質合成システムを利用し、抗体検出に必要な抗原を作成できるようにしたのがポイント。中国が発表した新型コロナウイルスの遺伝子情報に基づき、バイオインフォマティクスの手法で同ウイルスに特徴的なたんぱく質を突き止めた。
 新型コロナウイルスの患者に由来する検体6例すべてで陽性を確認した。PCR検査などの方法と比べ、特別な装置もいらず、そのまま診療現場で使えるのが特徴だ。抗体の有無で判断するため、肺炎患者らを対象に新型コロナウイルスかどうかを迅速に診断できる。感染既往歴が分かることから、疫学調査での利用も見込む。
 検出条件のさらなる最適化を図り、早ければ今年夏ごろにも研究用試薬として提供し、体外診断用薬として展開。併せて、関東化学とともに量産体制の構築も検討していく。
 今後の課題として、梁教授は「少ない抗体量でも検出できる精度向上が必要だ」と語った。竹内教授は、臨床医の立場から「どのタイミングで使うのが最適かといったマニュアルの作成が欠かせない」と指摘した。

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