機械商社の新たな試みが加速している。これまでは石油や鉄鋼、自動車、エレクトロニクス業界などに向けて製造装置や、その関連装置を扱ってきたが、最近ではヘルスケアやライフサイエンス、環境・エネルギーに関連する商材やサービスなど、新分野へ向けた事業展開に余念がない。いずれも既存のビジネスと親和性が高い点が共通しており、各社とも新しい収益の柱の育成へ着実に歩を進めているようだ。近年は本体あるいはグループ企業で開発・製造体制を確保し、その機能を強化している機械商社も少なくない。

 代表的商社の最近の動きをみてみる。第一実業は今後、ヘルスケア事業を強化する考え。これまで展開してきたファーマ事業が、製薬にとどまらず健康食品や化粧品、医療などの分野に広がりつつあることから、医薬を含めた健康を維持するための活動とサービス全般を「ヘルスケア」と定義し、実態に即したかたちで同事業を再スタートさせる。ヘルスケアの市場規模が2030年に20兆円以上に拡大すると予測し、これまで医薬で培った経験と知識をヘルスケア全体に活用していくという。再生医療分野への参入も見込んでおり、製薬企業や研究機関などの多様な要望に対応できる装置の開発を促進する。

 また東京産業は今期スタートした3カ年の中期経営計画「T-STEPUP2023」で、創立80周年を迎える27年に「環境・エネルギーに強い機械総合商社」という地位を確立する考えを表明している。同社の数々の新規事業のなかで注目されるテーマの一つが、環境配慮型包装資材・原料への取り組みだ。すでにグリーンポリエチレン包装資材の販売が順調に拡大しており、認証の取得によってユーザー開拓を一段と加速する見通し。今後は、さらなる環境配慮型包装資材の販売拡大を目指して、バイオマス原料の調達を拡大していくという。

 一方、西華産業は4月開始した中期経営計画「Re-SEIKA 2023」の基本戦略の一つとして「新たな収益源の開拓」を打ち出し、継続的に経営資源を投入する方針だ。開発事業を柱としており、既存事業との親和性が高く過去の経験が生かせる領域である再生可能エネルギーやライフサイエンス分野などをテーマとして定めている。これを実現するため戦略的なパートナーとの提携や人材の投入を図っていくそうだ。

 既存市場が成熟傾向にあるなか、機械商社は今後成長が期待できる医薬や環境・エネルギーといった新しい市場に注目しており、その開拓へ向けた動きが活発化しそうだ。

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