久しぶりに体が言うことを聞かない体験をした。16日の熊本城マラソンに参加したが、23キロ過ぎで棄権した。予想以上の強い雨、冷たい風に心身ともにやられた。低体温症の一歩手前だったのではないだろうか▼天気予報で雨は覚悟していた。熊本地方気象台のデータをみると、スタート時の気温は16・7度Cで暖かいくらいだ。しかし、寒冷前線の通過にともない気温は下がり続けた。いつもなら、1時間も走っていれば体は温まってペースが上がってくるのだが、今回はそうはならなかった▼異変を感じたのは18キロ付近。塩飴をなめようとしても手が震えて袋から取り出せない。手足を一生懸命動かしているのに空回りしている感じ。22キロでとうとう走れなくなり歩く。数分の葛藤の後、沿道の係員に「もう走れません」と告げる▼近くのAED設置ポイントで座らせてもらい、防寒用アルミホイルを巻き付けてもらうが体の震えは止まらない。医療スタッフ、近所の方々の気遣いが身に染みる。暖房が効いた回収車に乗り込んで生き返った気がした▼完走率は過去最低の83・3%。1万2000人強のうち約2000人が完走できなかった。緊急搬送されたのは42人。みんな完走を目指しているだけに止める決断は難しい。今も歩き続ければゴールできたか…との思いがよぎるのだが。(20・2・21)

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