地球温暖化防止活動で最も注目を集める人物といえば、ダボス会議にも出席したスウェーデンのグレタ・トゥンベリさんだろう。各国の指導者らに向けた「怒り」を込めたスピーチは、賛否はあるにせよ強い印象を残す▼相手にメッセージを届ける手法はもちろん言葉だけではない。ラジオ番組でも紹介していたが、ドイツで音楽によって問題提起するユニークな取り組みがあった。ヴィヴァルディの「四季」が気候変動の影響を受けたらどうなるか。NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団が昨年秋、披露した▼プロジェクトを主導したのは東京都交響楽団の主席客演指揮者でもあるアラン・ギルバート氏。四季が作曲された1725年から最近までの気候変動の影響を数値化し、楽譜に反映させた。世界的な気温上昇のデータなどを利用したという▼タイトルは「The Four Seasons」ではなく、「For Seasons(季節のために)」。コンサートの模様をユーチューブで見ることができる▼「春」のパートでは序盤、聞き慣れたメロディーが奏でられるが、少しずつ変化していくのが分かる。低音が強調されるようになり、軽やかな雰囲気が損なわれていく。地球環境のバランスがこんな風に崩れつつある-。音楽を通じて、そんなメッセージを発信していると感じた。(20・1・24)

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