産業のコメといわれる半導体で、かつて日本は世界を席巻していた。今では韓国、台湾に主導権を奪われたが、半導体回路の微細化で欠かせない極紫外線(EUV)プロセスの周辺装置では日本企業の存在感が増しているという。先端分野ではまだまだ負けてないと一安心する▼新型コロナウイルスのワクチン接種で話題になっている注射器も微細技術が生かされ、日本が生産する医療機器のなかで高い国際競争力を持つ。多くの輸出数量も誇っているのだ。その注射器、ワクチンの供給不足に自治体が頭を悩ませるなか、一般的なものではワクチンの液が残り5回分しか取れないところを、特殊な形の注射器を用いれば6回取りだ▼このほど関西の病院が糖尿病の治療薬・インスリン用の注射器を使って、1瓶から7回分を取ることに成功した。日本人の体型上、筋肉注射用ではなくて短い皮下注射用の針でも十分だという。テルモも日本人の体型にあわせて針を工夫し、本体と一体設計にすることで注射器に残る薬液の量を減らし7回接種できる注射器を国内生産する▼日本企業が生産する注射器には高い微細加工が施されており、「痛くない注射針」など患者の立場に立った製品を世に送り出してきた。まだまだありそうな世界に秀でる日本の技術力、棚卸しが必要かもしれない。(21・3・18)

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