バイオロギングと呼ばれる研究がある。動物にビデオカメラ、GPSなどの記録計を取り付け行動を調査する手法で、日本が世界をリードしている。近年問題となっている海洋ごみの分布と海鳥への影響について国立極地研究所などのグループが調べた▼対象としたのは伊豆諸島の鳥島で繁殖するクロアシアホウドリで、餌を求めて広範囲の外洋を移動する。13羽の行動データを解析したところ9羽が発泡スチロール、プラスチック片、漁網などに遭遇した。それらは主な採餌場所である黒潮の南側の海域に集中していた▼なぜ海洋ごみに誘引されるのか。それは海洋ごみに付着した海藻やフジツボが発する匂い物質を感知するため。アホウドリ類は嗅覚がとても優れており、20キロ先でも餌の匂いを嗅ぎつけることができる▼海鳥は海洋ごみを食べても異常を感じて吐き出すことはない。死体を解剖すると胃の中からたくさんのプラスチックごみが検出されるという。海洋ごみとの遭遇頻度が増えると誤食のリスクのみならず自然の餌の獲得量を制限する可能性がある▼今回、“海鳥の目線”を通じて海洋ごみの実態の一端が明らかになった。バイオロギングで得られたデータは生物の生態を明らかにするだけでなく、海洋環境の情報として活用できそうだ。応用研究の発展にも期待したい。(21・10・8)

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