新たなフェーズに入る7月である。在宅勤務と会社勤務、それぞれの勤務のバランスをどうとるか、新たな方針を打ち出した会社、あるいは打ち出そうと模索する会社さまざまだろう▼もちろん会社勤務の時間が増える人もいる。混雑した通勤電車に乗ったり、できれば直に会ったりせずに済ませたい苦手な上司と始終一緒にいなければならなかったりするかもしれない▼精神科医で筑波大学教授の斎藤環さんが、新聞のインタビューで「会うことの暴力性」ということを語っている。「人に会う」のは、相手の境界を侵す行為だからある種の「暴力」であり、だから人と会えばストレスがたまり、嵩じれば病気にもなる▼斎藤さんはこの「暴力」を、圧力とも少し違い「重力」の感じが近いという。自粛期間中は宇宙空間のような無重力状態にいたというわけだ▼かつて宇宙飛行士の向井千秋さんが、無重力環境の利用について語っていたことを思い出した。無重力状態の居住地(ステーション)を作り、その中で遠心力により疑似重力をつくる。寝たきりの病人を無重力に近い状態から徐々に疑似重力を大きくし、やがて地球上レベルの重力に戻しながらリハビリを進めていくというアイデアだった▼徐々に負荷を大きくしていくのがリハビリの要諦。これは現下の状況にも言えることだろう。(20・7・1)

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