熊本大学の速水真也教授らのグループは、酸化グラフェンが新型コロナウイルスに吸着して不活性化する仕組みを解明したと発表した。酸化グラフェンが表面特性によりウイルスに吸着し、スパイクたんぱく質を分解していることが分かった。酸化グラフェンは安価で容易につくれる。ポリマー材料との混合や表面塗布により、抗ウイルス製品の開発に寄与しそうだ。

 ウイルスの感染能力を測るプラークアッセイ法と、RNAを増幅するリアルタイムRT-PCR法で調べた。まず酸化グラフェン分散液中にウイルスを混ぜて60分培養したところ、感染能力が9割以上減少していた。

 さらに透過電子顕微鏡で観察したところ、スパイクたんぱく質が消えた状態のウイルスに酸化グラフェンが吸着していた。また時間に比例してスパイクたんぱく質が減っていることも分かった。

 以上の結果から、まず酸化グラフェンがウイルスに吸着し、徐々にたんぱく質を分解し、最終的にウイルスの感染能力を失わせていると推測できるという。

 酸化グラフェンは黒鉛を酸化して製造する新素材。表面の酸素官能基によりさまざまな物質に吸着し、親水性や絶縁性など多くの性質を発揮することが分かっている。成果は「ACSアプライド・ナノ・マテリアルズ」に掲載された。

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